第2回学習会の報告

日時:平成29年6月30日(金)午後2時〜4時
場所:山梨県武田の杜サービスセンター研修室
内容:「神代ザクラの花を見るまでを語る」
講師:小林稔蔵先生
   雲松園会長・日本樹木医山梨県支部

山高神代桜樹勢回復事業(平成14度〜平成17年度・4年間)

山高神代ザクラは、樹齢1800年とも2000年ともいわれるエドヒガンの古木で、大正11年にサクラとしては第1号の国指定天然記念物となった。同時に指定を受けた根尾谷薄墨桜、美春滝桜とともに、日本三大桜と呼ばれている。
天然記念物に指定された後、昭和10年頃までは、樹勢は比較的安定していたが、徐々に主要な枝が枯れ始め、昭和34年には台風により太枝が折れ、被害は甚大なものとなった。昭和59年には腐朽した主幹保護のため屋根つきの櫓が架けられたが、樹勢は著しく衰退していった。平成13年に文化庁山梨県武川村(当時)教育委員会、大学や試験場の研究者、樹木医などからなる樹勢回復調査検討委員会が組織され、調査が進められた。
その結果、天然記念物指定後に根元近くに石積みの囲いを設置し、盛土したことが分かった。昭和46年にはその外側に2度目の石積み囲いを設け、その中に盛土され、成育環境に大きな変化をもたらした。盛土は一時的には樹勢回復に効果があつたようだが、古い根への酸素供給が乏しくなり、地中深い所では枯れていった。さらに盛土した土層は、土壌生物相が単純化し、そこに伸びた根にはネコブセンチュウが蔓延、瀕死の状態を招いた。

樹勢回復工事の概要と結果

樹勢回復工事の概要と結果は2003(平成15年)から始めた。石積みで囲われていた根元周りを8分割し、毎年2箇所ずつ土を入れ替えていった。
根圈環境を改善することで、新たな発根を促しネコブセンチュウ病は、拮抗する土壌生物(主に有用な微生物)で抑制することとした。
工事は3年を経て樹勢回復の兆しが見られるようになった。新梢の伸長、不定芽の出現、早期落葉の改善、新たな発根などが見られる。発根は1年で1m以上になるものもあった。
しかし樹冠上部の枝の枯損、葉の矮小化など症状が改善されない部位もあり、予断を許さない状況は続いている。
今後は、樹床へ蘆の敷き詰め、施肥、病害虫防除と更に新梢の伸長に併せた支柱の補強作業などを行っていく。
質疑応答の後、NHkプロフェッショナル仕事の流儀樹木医のビデオを観賞しました。先生有り難う御座いました。熱心に受講された21名の皆様ご苦労様でした。    以上