やまなし緑サポーター会第3回学習会

日時:平成30年11月28日(水)午後1時30分~2時

場所:武田の杜サービスセンター研修室

演題:「ツツジの品種・栽培・病害虫」

講師:大澤正嗣先生(樹木医・農学博士)

      山梨県森林総合研修所 森林研修部長

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 ツツジは公園木、街路樹としてごく一般的に植栽されている。

常緑生のツツジ

ヤマツツジとその品種

 我が国の北海道南部から本州、四国、九州に自生する。最も一般的な原種各地の平地林の山裾に見られる低木、地方によって形態が著しく異なる。

 山梨でも普通に山野に見られる。「躑躅ヶ崎」など、山梨県の地名に残る。

・サタツツジ

 ヤマツツジの地域変種、キリシマツツジ、グルメツツジの親。

花色の変異、多花性のところがグルメツツジと同じ 

 特徴:

 ①春と夏に2回出葉し、夏に出る葉は大部分落葉せず越年(半常緑)

 ②最低気温が8℃以上になると開花。

  開花は、近畿や関東では4月下旬、東北は5月。

 ③開花から満開まで10~20日

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キリシマツツジ

 キリシマツツジは江戸キリシマとクルメツツジに大別される。

 九州南部(鹿児島県霧島山)で育成された品種 霧島ツツジの由来。

クルメツツジ

 福岡県久留米地域の特産。

 花は3~4cmと小輪だが花付きはよい。交雑による幅広い花色、他のツツジに見られない派手さあり。ほとんどすべてに枝先に花芽が文化し脇芽まで花芽になるため、他のツツジと比較して花数各段に多くなる。

 若葉が伸びだすのが遅く、枝が詰まった樹形になるので、全樹が花で覆われる。ゴールデンウィークに開花するので公園、行楽地で植栽されているツツジはほとんど本種。

 耐寒性は比較的あるが過湿に弱い。本種の鉢植え、盆栽として楽しまれてきたが近年はわすれられている。

・江戸キリシマの品種

  キリシマツツジの1系統。鹿児島地方の野生品種から江戸時代に江戸を中心に発達。花色は緋色は代表される。 

 ヤマツツジの血が濃く、グルメツツジより良く伸びて立ち性、耐寒性あり。 

 20品種程合ったが、近年は栽培されることが減っており、2品種程が見れれる。

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○ミヤマキリシマ

 九州の1000mグラスの高山の山頂付近に自生(霧島山阿蘇山雲仙岳)地を這うような形で密な樹冠。冬の寒気と強風によって灌木が育ちにくいところに生育。裸地性の植物でササ等に弱い。

 花は小輪2~3cm、花弁の上唇に斑点がほとんど無い、淡紫色がほとんど。盆栽に適している。

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○サツキ

 紅花系の野生サツキ紫花系のマルバサツキの2系統あり、野生の原種から育成された園芸品種。ツツジより1ヶ月遅く開花。

栽培:自生地の降水量多く、西日の当たらない渓流沿い、空中湿度多く、耐寒性低い。酸性土壌(ph4‚5~6)鹿沼土(通気、排水、保水の良い土壌)

 半陰性、午後はよしず越し等。盆栽、四季の変化、コンパクト、枝が密、側枝の発生多数。庭木様々な種類あり。

○ヒラドツツジ

 長崎県平戸地域で育成された大型のツツジ、あるいはそれと同様な品種群。複雑な交雑により葉形や花など非常に変化に富んでいる。

 一般的には樹勢が強く、生育はきわめて旺盛で樹齢も長い。

 ツツジの中では強健、寒さにやや弱い品種でもある。

 花色豊富、花径は6~15cm、株が大きく満開になると見事。

○ケラマツツジ

 奄美大島から沖縄本島に分布、あまり知られていない。標高1~2m。重厚な葉と強烈は花色で是非庭木に加えない一品。

 園芸品種はほとんどない。寒さに弱い。関東東部まで、風よけ、霜除け。

落葉性のツツ

ミツバツツジ

 早春から開花、枝先に葉が3枚輪生。痩せ地に生える。 

ミツバツツジトウゴクミツバツツジ、サイゴクミツバツツジ、ナンゴクミツバツツジ

 花は大変きれい、新緑の前に開花し色も良く目立つ。園芸化が遅れている。

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レンゲツツジ

 オレンジ色、黄色の花色は、ツツジには珍しい。園芸化されていない。高山性のツツジで暑さに弱い。根から花まで毒を含むので要注意。

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※シヤクナゲとツツジは同じ仲間(ハクサンシヤクナゲ、アズマシヤクナゲ)

 

 病気、害虫などの特徴と対策

ツツジグンバイムシ

 軍配のような形をしている害虫、体長は3~5mm。幼虫も成虫も葉裏で吸汁する。葉は白い絣模様になる。4月~10月の間に何回か発生する。

 防除⇒殺虫剤を葉の裏にかけるように散布する。

○ベニモンアオリガ

 幼虫がツツジ類の蕾と新芽に穴を開けて、内部を食べる。このため、蕾や芽が枯死し、翌年の花数が減少する。

 対策⇒殺虫剤(オルトラン、カルホス等)を、7月10月まで、2週間に1度散布する。

 中に虫のいる蕾を取り除く。枝に白いマユを作り越冬するのでこれを取り除く、

○天狗巣もち病

 比較的珍しい病気だが、美森周辺では被害が多い。

 対策⇒罹病部分の切り捨て。環境の改善。

○地衣類

 枝の薄い枝に日が当たる部分ができるとそこに地衣類が発生する。ツツジ自体が大きな被害を受けることもある。

 対策⇒ツツジを元気に育てる。地衣類を除去する。

○夏の乾燥

 ツツジ類は、乾燥では、十分育たない。道路の路側帯に植栽され、乾燥し過ぎて良く育たない例が多い。特に植え替え後は十分な灌水が必要。

レンゲツツジの衰退

 甘利山のレンゲツツジ衰退の調査は途中であるが、枯れが多く花が付かない株は、根元から切り戻し、萌芽させる。

 ススキや笹などを刈った後地面に敷き、乾燥を防ぐが有効であることが解りつつある。

シャクトリムシ等(ヒョウモンエダシャク)

 

美森のオオヤマツツジ

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 ヤマツツジ列では唯一の国指定天然記念物希に見る巨樹日本1樹高2.5m枝まわり24m主幹20数本+12本

 昭和3年(1928年)県指定

 昭和10年(1935年)国指定

 昭和48年(1973年)花付きは半分、樹勢やや衰弱、天狗巣もち病の被害が多発。遅霜の被害も受けた。

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 学習会皆様熱心に受講しています。
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