緑の相談所主催「緑の教室」受講して

 日時:令和2年7月12日(日)AM9時30分~11時30分

場所:富士山科学研究所(富士吉田市)

内容:演題「外来植物の現状と対策」

講師:富士山科学研究所 

  研究部自然環境科 主任研究員 安田泰輔先生

 本日の内容

  ☆ 特定外来生物アレチウリの事例

  ☆ 外来種の問題

  ☆ 山梨県内の侵略的外来生物(植物)侵入状況

  ☆ どのように対処していくか?

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特定外来生物アレチウリの事例

山梨県甲州市重川上流河川敷の調査状況 

 一年であっという間に河川敷のヨシ、オギを覆ってしまうほどの旺盛な繁殖力を持つ、また、樹木にも絡み付き木登りが上手である。 

・アレチウリ(荒地瓜)つる生1年草

 北アメリカ原産。1952年静岡県清水港で見つかり、その後、各地に広がった。河原や荒れ地に多い。葉は円心形で、浅く5~7裂する。雌雄同株。葉腋から花序を出し、黄白色の花をまばらにつける。雄花と雌花はそれぞれ別の花序につき、雄花序は長さ10~15cmでまばらに雄花がつく。雄花は直径1cm。雄しべは花糸も葯も合着し、キノコのような形になっている。雌花序は短く、雌花が頭状にあつまってつく。雌花の柱頭は3個、花期は8~9月頃に咲く。

 果実は長卵形の液果が数個集まってつき、金平糖のように見える。表面は軟毛と刺が密生する。なかに種子が1個入っている。

 ウリ科アレチウリ属。

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・「アレチウリの危険性」 

 アレチウリは北米産の一年生の大型のツル性植物です。

 2006年(平成18年)に駆除すべき「特定外来生物(植物)」に指定されました。

 春に発芽し、夏には著しく旺盛な成長によりツルを伸ばしながら他の植物にツルで絡み付ながら覆い尽くして光を遮り、植生を単純化させます。アレチウリしか植生できなくなります。

 アレチウリのツルは長いもので10m以上に成長します。

 秋には大型の種子を大量に生産し枯れます。1年で枯れてしまいますが、枯れたまま残ります、生産された種子の多くは翌年以降、発芽して同様繁茂するため、放置すれば一面を覆い尽くすように拡がります。

 また、放牧地や農地にも侵入し、莫大な被害を生じることもあります。そのため、少ない段階から駆除を実施し、蔓延を防止しましよう。

 

外来種の問題

 ・旺盛な繁殖力

 ・隣近所への侵入能力が高い

 ・大量の種子生産とシードバンク形成

 ・農作物への影響

   〝たくさん増える〞

  〞他の生物、人間生活にまで影響が及ぶ〝

 

山梨県内の侵略的外来生物(植物)の侵入状況

 ・河口湖のアレチウリの分布事例

  前年度出現した場所で、翌年も出現する傾向が高い。 

  2011年度以降、南岸と東岸に新た分布域が発見。

  湖畔の42%に侵入する可能性がある。

 まとめ

       ◽分布状況を把握することは極めて重要

  ◽踏査により分布図作成

   ・駆除計画の立案・・駆除活動の場所、動線の確保等

   ・駆除活動が開始!

  ◽侵入予測の試み

   ・生育地特性が把握できる⇒警戒すべき場所を事前に特定

   ・今の状態が維持しれるか?それとも増えるのか? 

 ◇全県的な侵入状況把握

 ・踏査は困難、車載カメラを使った新しい方法を適用

   GPSデータと同時→分布位置決定

 ・調査

   2015年6月~10月の間、計15日県内各所を走行

              (総走行距離:1313‚5km)

  ①アレチウり 発見地点数331

   新たに記録された地域・身延町、南部町の富士川流域、

   金川流域、小管川流域等

            年平均気温が高い地域、農耕地に分布

  ②オオブタクサ 発見地点947

   農耕や降水量の多い地域に分布

  ③オオキンケイギク 発見地点981

   市街地、道路縁に分布

 まとめ

  ◽・広域的な分布状況の把握が可能

  ◽種ごとに生育地特性が異なる

   ・地域ごとに侵入しやすい外来種がある

   ・地域特性や保全したい場所によって、対策を変える

  ◽情報共有の促進が必要

   ・分布情報の共有、危険性の周知、対策方法等

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☆どのように対処していくか❔

  ・侵入が確認されている地域多数

 ◇いれないため、拡げないために

 ◽守りたい地域や対象を明確にすること

  ・例:富士山五目、富士五湖畔では駆除活動を毎年実施し

    ている。(できるだけ小さいうちに抜き取る)

 ◽侵入状況を把握して、作戦を立てること 

  ・守りたい地域とその周辺を監視する

  ・未侵入のときは、侵入することを前提に監視する

  ・チームは地域住民の理解を得られるように活動する

 ◽実行し、その効果をモニターしているか❔

  ・駆除の成功と保全の両立しているか❔

  

  ◊アレチウリの駆除方法は❔

  ❗できるだけ小さいうちに抜き取る

  ❗機械で刈り取る方法

   他の植物まで刈り取ってしまいかねません 

  ❗除草剤を用いる方法

   他の植物や周辺環境への影響が懸念されます。

  ❗天敵を用いる方法

   今のところアレチウリの天敵は見つかりません

 

おわりに

 ◽目的は〝地域の自然環境の保全〞 

  ・保全とは自然のプロセスを維持すること

  ・外来種駆除はその1つ

  ・外来種は悪者ではない、原因は人がつくってきた

 ◽新しい展開が望まれる

  ・ただ駆除するだけではなく、食べたり活用したりする 

   方法を見いだすこと

                  以 上

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 会場が富士吉田市の富士山科学研究所と遠路ご参加を戴きました皆様には大変ご苦労様でした。

 やまなし緑サポーター会は、国中から13名が参加して熱心に聴講されました。