令和4年度 第一回学習会「八ヶ岳山麓の草花(草本)」

総会に続いて学習会を行いました。

  時間:PM,3:00~4:30

  演題:八ヶ岳山麓の草花(草本) 

  講師:田中 智 氏(山梨県植物研究会会員、自然ガイド、げんごろう工房)

<講演要旨>

・生まれは神奈川県、1987年に山梨県北杜市に移住、既に山梨県人と思い地元では

 自然情報誌「だたら八つ」を発行し20年を経過。八ヶ岳トウヒの調査から山梨県

 植物研究会会員として活動しています。

・今回の話の植物分類体系はAPG体系(1998年に公表された被子植物の新しい分類

 体系)では無く、古い分類体系ですので了解をお願い致します。

・今回の話は「八ヶ岳山麓及び美し森の植物、笹刈り」の話をさせていただきます。

・植物の3大要素は「大地、気候、人為」、大地は「地質」で八ヶ岳山麓は火山噴火

 の堆積によるもので秩父山地とは違いがある。

大地は野菜を作るときはアルカリ性や酸性など気に掛けますが、植物もその大地

 (土壌)に関係し日本は3つのプレートによって動き、地質に大きな違いがある。

地形は斜面でも北や南、また尾根や沢など、気候は水分が多い少ないなど。山梨

 でも郡内地方は湿度が高いが八ヶ岳は北なので低い。富士山は海に近いので植物は

 豊かど同じ山梨でも地域で違いがある。

人為的なものは昭和10年に天然記念物に指定された「美し森のオオヤマツツジ」が

 枯れ寸前で問題となっている。私は今年から山梨県文化財の保護指導員として

 オオヤマツツジの調査報告を行っている。

・枯れの原因は「森林化」で昔は草原で木が無い環境で低木のヤマツツジは広がって

 いた。美し森やキープ協会あたりは真っ赤に染まるように咲いていた。戦後の少し

 までの生活燃料は木を利用していたように山が利用されていた。木の利用が無い今

 は落ち葉などで土が肥え、森林は広がり、それが自然の摂理。

・キキョウやオミナエシが無くなったので戻したいと言うのは自然の摂理とは逆の考

 えでもある、そのような3大要素の中で植物がいる。

・私は植物を見るときは地図(カシミールをダウンロード)を見て「どのような地形」

 となっているかを確認する、例えばカタクリは湿った北の斜面ならば地図とリンク

 させて確認する。

八ヶ岳の20万年前は富士山と同じ形をしていたが山体崩壊で今の形となり、地質

 学的には新しい、八ヶ岳が流された高根、大泉、小淵沢は段上と呼び新しい土のた

 め「カタクリフクジュソウ」が入っていないなど地質、地盤から見ていくことが

 必要。

山梨県の地質は新しい地質の八ヶ岳山麓、右に金峰山花崗岩地帯、秩父山地の堆

 積地帯、左側の鳳凰三山花崗岩、白州の白い石は花崗岩で風化に弱く砂になる、

 その中には砂鉄があり武田信玄はその良質な砂鉄から武器を作った。

火山岩はマグマが出て冷えて固まった、花崗岩は地下でマグマが固まったもので軽

 いので地表に出る。甲府分地はその花崗岩で出来ている。

中央構造線フィリピン海プレートの影響で八ヶ岳で折れ、南アルプス北岳は堆

 積岩、八ヶ岳、甲斐駒は花崗岩で植物が少ない。

カタクリを例にとると川の両岸で有無の違いなど、地質との相関関係となる

八ヶ岳はブナは無いが、飯盛山から秩父山地にはある、例外は鳥による種子が運ば

 れることがある。

・気候では八ヶ岳は乾燥して冬は寒い、富士山は湿度は高い。また地形はヤツガタケ

 トウヒはドイツトウヒの系統でクリスマスツリーに使われる。八ヶ岳の北東面にし

 か無い、原村、富士見町のみで地質は石灰岩地帯、アルカリ性で普通の植物は嫌う

 ため、そこに残っているのは絶滅危惧種が多い。

八ヶ岳の特徴は長野県と山梨県の南北に連なっているが山梨県側は八ヶ岳の1/10

 程度、麦草峠の南北で植物が違う、日本海植物と太平洋植物に別れ、北は雪が多く

 南は少ない。

縞枯山は名前の通り新旧の層が入れ変わり縞枯のようになる、オオビランジ、クモ

 イコザクラ、サクラソウ、オキナクサは個体数は全国一で天女山、美の森が多いが

 鹿が食べる。 

・横岳と富士山の5合目にヤツガタケスミレ、ヒナリンドウは日本全国でも八ヶ岳

 か無い、

・美し森の植生、昔はヤマツツジで一面が赤く染まっていた、昭和50年代にはアツモ

 リソウが多くあった。羽衣の池には絶滅危惧種トキソウ、またハルリンドウ

 ニッコウキスゲなど、カセンソウは数年前に確認したが森林化してミヤコザザが

 優勢となり草原植物が少なくなった。樹木はトウヒ族であまり影響を受けていない。 

・草地の三大地は甘利山、乙女高原、梨が原、美し森は入らない、梨が原は絶滅危惧

 種が多く国が守っても良い場所だが、火入れにより維持されている。有名になると

 草本が盗まれる心配がある。また甘利山、乙女高原は環境を守る団体がいるが、残

 念ながら美の森は観光重視のようだ。

・笹は樹木を利用しないため木の葉が腐葉土となり土地が肥沃化して笹が優勢となっ

 た。クマイザサは雪の多い場所、ミヤコザサは寒くて雪が少ない場所、冬は冬芽が

 凍るため春になると発芽して伸びる、大きくなるのが7月ころで地面に笹自身の葉

 で多い他の植物に入れないようにしている。

・7月ころに新芽を刈ると一年は成長しない、毎年のように継続すると笹は後退する

 ので狭い範囲で成果を出すようにする。しかし、そのころは山野草も芽を出すため

 高山植物を見つけたら個別に守るしかない。

 しかし鹿に食べられる可能性があり、囲いなどの保護が必要。

  

<質問>

 Q:笹は切る方法として根まで切ることが必要ですか。

 A:表面を切る程度で大丈夫です。

 Q:地形のアプリについて教えてください。

 A:カシミールのアプリ(1,500円位)ダウンロード

   Q:八ヶ岳トウヒの発見時期、山梨の地名が付く植物

   A:八ヶ岳トウヒを発見したのは1911年。ヤツガタケキスミ、ヤツタカネアザミ、

   ヤツガタケシノブ、ヤツガタケキンポウゲ、ヤツガタケサクラ、郡内地域では

   グンナイフウロヤマナシウマノミツバ、ヤマナシは中国から入ったもので

   長十郎の原種で山梨とは関係は無い。

 Q:クマイザサとクマザサの違いを教えてください。

 A:総称でクマザサと言い同じ、歌舞伎の隈取りで葉に白い隈取りがあることが名

          前の由来。 

 Q:モミとトウヒは同じか

 A:違います、モミは松ぼっくりが無いが、トウヒはある、日本名は難しくヒメバ

          ラトウヒと言うモミがある、またメグスリの木があるがカエデです。学名は正

         しいいので学名から確認して下さい。

 Q:標高によってササの種類

 A:郡内地域にスズタケがあり背丈くらいになるが、芽を鹿が食べて減少している

           山梨県ではその三種くらいでミヤコザサの見分け方は枝分かれせず一本で成長

         する。

<閉会挨拶>

 麻川:八ヶ岳地域に70年あまり住んでいるが、初めて聞く話が多々あり驚きまし

   た。田中先生は自分の足で調査した話をされているので他の学者にはできない貴重

   な存在です、いつまでも山梨の植物について教えて頂きたいと思います。

  ありがとうございました。                                                                                                                                                      以 上

 

                講師の「田中 智」先生

 

             学習会 風景