平成30年度第2回学習会の開催

日時:平成30年9月19日(水)午後1時~4時

場所:山梨県自治会館・視聴覚室

講師:大月短期大学非常勤講師 鈴木憲仁先生(樹木医)

山村副会長より開会の挨拶と講師紹介が有りました。

 
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 鈴木先生は、笛吹市御坂町在住・大月短期大学非常勤講師として生物学を講義しております。

 又、山梨日日新聞「なるほど植物学」「やまなし樹木天然記

物」などコラムを掲載、著書は「山梨花の散歩道」「中央線花ハイキング」共著に「山梨の花高山植物」など著者多数有る。

演題:「なるほど植物」

 はじめに、先生が植物の様々な教材をご用意戴きました。用意された、教材を使って分かり易く楽しい講義が始まりました。

 ※ススキとオギは色で区別できる。

十五夜さんのお月見に🐰🎑🍶 ススキの穂と白玉のだんごや 穫物のカキやクリなどをそなえ、風になびく穂を眺めて尾花(おばな)と言った心境は、日本人独特な風習かもしれません。

○外観からの区別

ススキとオギはよく似ているが、オギはススキより大型で、地下茎があるため林立しついる。一方ススキには地下茎がないので、株立ちをしています。また、オギは水分の多いところを好むので河原や湿地に生育するのに対して、ススキは乾燥した草原に生育している。 

○区別する決め手

多いは実が一粒入っている小穂(しょうすい)の毛(基毛・きもう)

が、小穂の二倍以上長いのに対して、ススキの基毛は小穂と同じくらいの長さ。

 なおススキの基毛は薄茶色ですがオギの基毛は銀白色をしているので美しく、遠くからでも色合いで区別できます。

 ススキには、実の殼にある針状の毛である芒があるのに対して、オギには芒がない。

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 ※ヒノキとサワラの違い・葉裏の白粉がYかXか

 ヒノキの仲間(ヒノキ科)には、ヒノキ、サワラ、アスナロ、クロベ、コノテガシワ、ネズミサシなどがあります。

 庭園によくみ見られるチャボヒバ、イトヒバ、シノブヒバは、ヒノキかサワラの仲間かの違いについて、ヒノキの葉鱗片状で茎に密着しており、左右対生する大型のものと、上下に対生する小型のものがある。

 そして葉先がまるく、そとに尖らない。裏面に葉の会わせ目の溝にそって蝋(ろう)の白粉があり、これがY字にみえる。一方サワラの葉は、左右、上下に対生し先が尖り、外に突出す。

 葉裏の白粉は多く、ヒノキより白く見え、これが蝶々形やYの字にみえる。

 そこで、チャボヒバは、葉先が尖らず、葉裏の白粉がY字なので、ヒノキの仲間(ヒノキの変種)になります。ヒノキより枝葉が密生し、余り長く伸びず、葉は小さく緻密です。

 次に庭に枝が長く垂れ下がるイトヒバは、葉先が尖り外に突き出るのでサワラの仲間(サワラの変種)になります。

 シノブヒバも同様サワラの変種で、葉が長く、先が長く尖り出ます。さらにヒノキの実は8~10㎜、サワラは5~6㎜、ヒノキの実の方が断然大きく区別できる。

 どちらも福島以南に生育し、ヒノキは自然には山🏔の尾根筋に生育し、サワラは西沢渓谷など沢筋に生育する。 

 ヒノキは山梨市切差の金比羅山の岩尾根に相当の古木が6本ほど生育し、県の天然記念物に指定されている。

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 ※サクラ🌸は何故美しい?ー日本人は何故こんなサクラに魅せられるのかー 

 サクラの花が咲きはじめると、春本番になったと胸がときめき、寒い❄冬から⛄やっと解放されたと希望が湧いてきます。

①花の数が多い

 サクラー1つの蕾の中から3~4つの花が出る。成木の花の数 ー10万以上 

 ウメー 一つの蕾から1つの花。生木の花の数ー3万

②どの木も同じ時期に一斉に咲く

 ・蕾の中にいつでも花を咲かせる状態で冬眠している。

 ・ソメイヨシノー接木で増やしている(クーロン) 

  どの木も同じ性質

③散りぎわの美しさー花の命は1週間。花びら一枚一枚が回転して散っていく(花びらの形が丸い、しかも花びらが反っている)

○サクラの分類1がく筒で違いを見つけ 

1、ヤマザクラ・がく筒はすんなりとし膨らまない。花柱、がく片は無毛。

2、カスミザクラ・がく筒はすんなりし膨らまない。花柱に毛。花柄に毛。 

3、エドヒガン・がく筒がつぼ形に膨らむ。花柱、がく片、花柄に毛がある。

○サクラの分類2葉の違い腺体探してみる

1、ヤマザクラ・若葉赤褐色裏は白味を帯びる、腺体が柄の上部にある。柄に毛がない。

2、カスミザクラ・若葉は緑色裏は薄い緑、腺体が柄の上部にある。柄に毛がある。

3、エドヒガン・葉が長い、側脈が10本前後ある。腺体は下部に多い。

○なるほど

フクジュソウ(花の温室で虫を集める戦術)

 福寿草は雪の消えたばかりの早春に花を開き、山国に春を知らせます。

 フクジュソウは夜や曇りの日は雌しべや雄しべを守るために花を閉じていることをご存知ですか❔そして、日が出ると花は太陽を追いかけます。パラボナアンテナのような形をした黄色く光沢のある花は、雄しべや雌しべのある花の中心に光をよく集めます。花の中は外気温より10°C近くも温かく✨☀✨なりまるで温室です。花に蜜はないが温かい空間と雄しべが出す花粉を求めて、ハナアブの仲間がやってきます。暖められた花の中でハナアブは活発に活動でき、その結果、花粉が体に付着して花粉の「運び屋」になるのです。

オオイヌノフグリ(二段構えで種を残す)

 節分👹を過ぎても明け方まだ氷点下に冷えるころ、日だまりの空き地や田畑には、オオイヌノフグリの花がコバルトブルーの瞳を輝かしたように開きます。小型のハナアブの仲間は、ほかに花がないので、わずかな蜜や花粉を求めてやってきて、彼らのエネルギー源にします。 

 花粉を受け渡しが済んだ花は色が薄れて、1~2時間後にぽかりと落ちてしまいます。とこれが、冬の虫の少ない時期、1日待っても昆虫が来ないこともあります。オオイヌノフグリの花は1日で散る一日花で明日待ちたくも、明日はありません。昆虫に訪れてもらえなかった花は、子孫を残せないのでしょうか❔

 ところが、日が西に傾くころ、花粉にもらえなかった花は、左右に離れていた雄しべが真ん中に立っている雌しべにそっと寄ってきて花粉の受け渡しをします。そして、めでたく種を残すことができます。これを同花受粉と言います。

 

※街と緑英国見聞記

「木の権利」

 ロンドンテムズ川沿いや街路樹トチノキ、ボダイジュ(菩提樹)オーク、カエデ類、トネリコ、シラカンバなどが植えられている。樹木は成長をそのまま自然の姿―樹形が保たれて1本1本の形が実に美しい。木の権利―も木権があるように伸び伸びと数百年の成長が続いているところに、イギリス人の木に対する気持ち―国民性が感じれる。かるヨーロッパ人のツリードクターが東京に来て、街路樹が剪定や枝下ろしされている姿を見て「日本人はどうしてこんなに木をいじめるのだろう」と驚いた。

「憩いの場・公園」

 樹木は自然のまま配す・数の多さと広さに驚く❗街路樹の

素晴らしさに驚き、さらにロンドンは公園が多いことにも驚いた。ハイドパークには、日本の木ケヤキ、エノキ、ブナ、イロハモミジなどが育てられている。

 「王立植物園」

 世界の樹木がそろう、スケールの大きさ実感❗広大な公園内は、プラタナス、ブナ、オーク、ボダイジュ、クリ、トネリコ、イヌシデ、ホオノキ、シラカンバ、カエデ類(いずれも和名の木と違うところがある。たとえばホオノキは日本のものより葉があつく、またシラカンバは葉がちいく、葉身下部がくさび形をしている)などの木々がありのままの姿で育ち、一本一本が大木となっている。それらの樹木がどれだけの大きさになるかを考えて植栽されている。

※森林王国・日本

 日本は主な森林の種類がほとんど存在している。世界でも有数のバラエティに富む森林国である。

 日本の森林の多様性はワールドクラス❗

北関東から鹿児島までは気候帯で言うと暖温帯です。植物は冬は大丈夫だけれど夏はしんどい、しっかり対策をとらなくては生きていけないという状態です。つまり、冬は光合成をするために葉を付けておくことができる。しかし、夏は蒸散が激しいので葉の表面にしっかりとワックスを分泌して水がうしなわれないように対策をとる。典型的なのがツバキの葉。少し厚めで冬も落葉せず表面がぴかぴか光っている。ワックスのことをクチクラと言いますが、あれが照葉樹なのです。

 一方信州や東北・北海道の西半分あたりは冷温帯です。ここでは逆に冬対策が重要。低温のため光合成のできない葉は、利益の上げられない給料泥棒の社員と同じ。秋が深まると全員首にして落葉。春に新入社員を揃えます。したがって夏だけ緑の夏緑樹。北海道の東半分は亜寒帯です。ここではもっと寒冷地仕様の植物である針葉樹が生育します。

 シイとブナはどうして違う場所に生えている❔

夏緑樹と照葉樹はすみわけている。

 この広葉樹には、照葉樹(常緑広葉樹)と夏緑樹(落葉広葉)とがある。シイやカシなどの照葉樹は、日本の南の地方に分布し、冬でも葉をつけていますが、ブナやカエデなどの夏緑樹は、北の地方に分布し、冬は葉を落とします。

 ある地方に分布する植物の種類は、主に気温と降水量で決まります。照葉樹と夏緑樹の違いと、すみわけようすをみてみよう。

○気温に合わせて葉をつくる

 九州の平地には、照葉樹林が分布しています。九州あたりの照葉樹は、冬に気温が下がっても、光合成によって生産される有機物の総生産量から呼吸で失われる量を引いた純生産が大きいので、葉は冬でも役に立っているので落葉しない。

 しかし、日本列島を北上して東北地方まで行くと、冬は気温が下がり、光量も減り、総生産が少なくなるので、冬に葉を落とし、春になったら新しい葉をつけるほうが採算よい。

 夏緑樹の葉は、半年ほどもてばよいので、薄く菜っている。一方照葉樹の葉、厚くて高温や乾燥にも耐える。作るコストはかかりますが、長持ちすることで採算がとれる。

○針葉樹の葉は寒さに強い

 さらに北上して北海道まで行くと、夏でも純生産量が少なく、春に葉をつけかえるコストさえ負担できなくなるため、再び常緑樹が有利になります。しかし、常緑樹といっても、エドマツやトドマツなどの常緑の針葉樹です。

 針葉樹の葉は、形細長く、表面はワックスに富んだ厚い層に覆われていて、冬の厳しい低温にも耐えることができます。

○植物の分布を決める主な要因は気温と降水量

 ・垂直分布

内陸(カシ、アカマツ)~海岸(シイノキ、クロマツ)

 暖帯標高500m(カシ、シイ、タブ、エノキ)ケヤキは温帯にも分布する。

 温帯標高1700m(クヌギ、ブナ、ミズナラとコナラ1000mで 分布が別れる、シラカバは800m~1700m) 

 亜寒帯標高1700m~2500m(ダケカンバ、シラビソ、コメツガ、ナナカマド)

  寒帯(高山帯)2500m以上(ハイマツ、高山植物)北海道知床の平地に高山植物

 ・水平分布

 暖帯(シイ、タブ、クスノキ、カシ、ヤブツバキ)

 温帯―常緑広葉樹・落葉広葉樹(コナラ、トチノキ、シラカンバカエデ類、クリ、ケヤキ、エノキ)

 亜寒帯(エドマツ、トドマツ)

○日本列島は何故降水量が多い?

 タクラマカン砂漠🏜で熱せられた空気が上昇してチベット高原ヒマラヤ山脈で冷やされて中緯度(日本列島)に偏西風によてて運ばれるから

○「樹木天然記念物について」

 南北3000kmにおよぶ日本列島は🗾世界的にも希なる多種多様な植物が生育している。それらが織りなす四季の変化は美しい日本をつくりあげている。かっては、神社や寺などの境内、農家の屋敷林、集落の辻など、巨樹、大木、老木などがあり、人々に崇められ、大切に保護されてきました。しかし急激な都市化や道路網の拡張、土地の有効利用などにより、これらの木々が姿を消してきました。

 地域にある様々な自然は私たちの貴重な財産です。天然記念物に指定され残された樹木は、自然の成り立ちを知る上で欠かせない学術的価値のあるもので、自然史としての歴史の証人とも言えます。

 山梨県内には幸い巨樹、名木か比較的多く残されいます。これらは県民の財産です。天然記念物の価値を明らかにして、活かすことで、県民の自然観や地域とのつながりを育むことが出来ると思います。

 天然記念物になる条件は、高さ、太さなどの巨木や名木であること以外に、種としての貴重種やまた歴史的価値、数奇な運命をたどった樹木など幾つかがあります。 

 1988年に、環境省が全国の巨樹・巨木林調査を行うにあたって統一した基準をさだめました。巨木は地上130cmの位置での幹周りが300cm以上の木と定めました。

 日本全国の巨樹は55‚798本(1991年)ただし、計測されていない樹木もあり実際にはこの倍以上あると推定されています。最も多い巨木はスギ13‚681本、2位はケヤキ8‚538本、3位はクスノキ5‚160本です。あとは、イチョウ、シイノキ、タブノキと続きます。

 山梨県の国指定天然記念物14件、県指定は86件で、一番多いのはスギ、サクラ、マツと続きます。

 鈴木先生は、4月かり山梨日日新聞に「やまなし樹木天然記念物」を連載中です。この中でやまなし緑サポーター会の講演会の開催を紹介して戴きました。

 今回の参加者は会員33名、一般参加者1名でした。講演では、先生の名調子と幅広い内容で皆さまから大変ご好評を戴きました。先生には、長時間のご講義ありがとうございました。


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